『この君なくば』(葉室 麟:朝日新聞出版)
幕末の九州、尊皇攘夷と開明開国でゆれる架空の小藩・伍代藩--軽格の藩士の二男に生まれた楠瀬譲と恩師・檜垣鉄斎の娘・栞とは互いに惹かれあう仲だった。檜垣鉄斎の学塾「此君堂」と--何ぞ一日も此の君無かるべけんや-を題材にして、伍代藩という小藩の行く末と自らの真摯な生き方を、栞と譲の立場から、また譲の理解者である藩主・忠継と側室となる五十鈴を絡めながら話は展開していく。開明的な藩の施策を進めようとする伍代藩に立ちはだかる尊皇攘夷藩士の佐倉健吾と絡めて留米藩神官の真木和泉や長州攘夷派の久坂玄瑞などによる尊皇派の激発から薩長連合の経緯、更には鳥羽伏見の戦いから明治維新・版籍奉還から廃藩置県までの流れの中で、登場人物達の生き方を小藩としての伍代藩の誠実な対応を絡めて描いてくれる。
歴史小説のジャンルだが、「この君なくば」という譲・栞の深い愛情がテーマとなっている。
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